2013.12.14 16:30■どうやらオレは一度死に掛けたらしい オレは幽体離脱したことがある。再現ドラマなんかでやっている、部屋の隅から自分を見ているという光景――あれは映像独特のステレオタイプな演出だと思っていた。霊は部屋の隅に溜まりやすいとか何とかいうのも、どうせ口裂け女的な都市伝説だろうと。でも実際オレは部屋の隅の、それも上の方から、意識無く横たわる自分とその周りの人達の様子をしっかりと眺めて...
2009.12.30 15:00■冬の花火 ~夏の終わり side-C 毎年、オレの田舎で年末に村祭りがあって、規模は小さいけど花火が上がるんだ。空気が澄んでるからやたらと綺麗だぞ。来年は受験だから、見るなら今年だろ。せっかくだから来いよ ――・・・・・ ・・・・・ 吐く息が白い綿飴のように、規則正しく口から出て消える。僕が来てからの3日間は、北国にしては珍しく暖かい日が続いていた。夜はさすがに冷えているが...
2009.10.30 15:00■たこ焼き模様 私のバイト先は、畳2畳ほどのプレハブの中。毎日熱気に包まれながらたこ焼きを売っている。 住宅地のど真ん中にしては通勤・通学路に沿っていて、下校生をターゲットにそこそこ小遣いが稼げる。初めは近所のおばちゃんのお手伝い感覚でやっていた私も、最近は如何に美味しい丸いたこ焼きを焼くか、ちょっとした職人気分でいい汗を流している。おかげで体重が...
2009.10.30 15:00■夢で逢いましょう 一時期、僕はほぼ毎晩同じ夢を見ていた。 画面はちょうど写真のような横長の四角で、色は何故かセピア色。夕方少し前くらいだろうか、斜め前方から弱々しい光を感じる。 運動靴の裏に細かめの砂利の感触があって、歩くと確かにグザリグザリと耳障りな足音を作っていた。いびつな三角形のその場所は周りを低めの防風林に囲まれ、同じくらいの年恰好の子...
2009.07.29 15:00■原色のワルツ履き慣れないパンプスで闊歩するその足の裏に、妙な音と凹凸を感じて彼女はぎこちなく立ち止まり、恐る恐るその足を上げた。 踏んづけたのは自分だけではないらしい。が、まだ真新しいその学生証には明らかに彼女の靴跡が一番クッキリと付いていた。彼女はそれを拾い上げ、自分のパンプスの跡をまじまじと見つめた。 「あっちゃぁ……」 表紙のみ厚紙のその小冊子...
2009.05.31 15:00■蝉の記憶 ~夏の終わり side-B畑の広がるど真ん中に無遠慮に伸びる、1本のアスファルト道路。いつまでも続く軽い傾斜が、僕に負担を強いる。前方に逃げ水を見つけ、僕たちの足取りは更に重くなった。 立ち止まり深呼吸する。2人分のカバンを持って、行き過ぎた康平が振り返りざま声を掛ける。そんな事を何度か繰り返し、僕たちはあの場所に差し掛かった。 「あそこだったね」 「あ?」 「ほ...
2008.08.04 15:46■夏の終わり その日も僕は、いつものように部活の帰りを蒔野(ときの)と並んで、うだるアスファルトの道を歩いていた。特に何を話すでもないが、帰る方向が一緒なのと、何故かいつも自然と一緒にいた。他の部員とあまり話をしない僕も、蒔野とは気が合った。この地域一帯は元々湿地だったのを、埋め立てて舗装して出来たらしい。だから必要以上に湿度が高く、特に今年の夏は、...