声を出す前の準備運動あれこれ ~ その1:カイホウの心得


自分がこれまで試行錯誤でやってきた、歌う準備のための準備運動、即ち難病てんこ盛り抱えた状態で日常生活もままならんようなヤツが、声楽とかいう非常事態的な事をするために、解消せねばならない数々の難問突破の方法を、ブログでバラバラと掲載していたのでこの度ちょっとまとめてみようと思い立った。まぁ自分の為の振返りの一端であるが、同じような身体の演奏家の方々にも参考になるかもしれないと思うこともあるので(って、同じような身体の演奏家がさてどれだけ居られるかというのも問題だったりするがw)、部分再掲という形で公開しよう。


あくまでも、線維筋痛症末梢神経障害脊椎側彎症性同一性障害な声楽家としての非一般的な身体を元に話を進めるので、まぁ一般的に見ても間違いではないけど、万人に通用するかはさて置きということでまずはご了承の程を。

恐らく健康体の一般的な人たちには普段必要のないことや当たり前として捉えられる事も、このミックスでグレーな身体には相当な負担であったり再認識せざるを得なかったりする事が多々あり、また別の言い方をすれば、普段の些細な、忘れがちな所謂『初心』を、この身体だからこそ気付く事が出来たり感じることが出来たりする。ある意味、特殊能力的な面も持ち合わせていると思えてくるとちょっと得した気分でもある。


というワケで、まずはストレッチ。

日常生活に於いて、疲れを取る筈の睡眠でさえ、一定時間身体を動かさない事による筋肉や関節の硬直を招いたり、重力の掛かり方が変わることにより、自重(自分の体重)によって自分の身体が圧迫されたり痺れを起こしたりする。
そんな肉体を、日常生活を送るより大変な歌える状態にするために必要な事。

【1】胸を張る:胸筋ストレッチ

①両手を腰に当てて少しだけ肘を後ろに引き、顔は仰角10度くらい(心持ち上を見る程度)。
 ②そのまま鼻からゆーーっくり息を吸い、両肩が開くのを感じながら胸で息をする(要は深呼吸)。
 ③この時腰を反らしたり動かしたりせず、上半身(胸)だけで呼吸する。
  ※深呼吸すれば勝手に胸が開く。無理に胸を張ろうとして腕を後ろに引きすぎると僧帽筋を痛めるだけ。


【2】肩甲骨を広げる:僧帽筋ストレッチ

①両手をお祈りの形に組んで掌を前に向けて出し、腕を伸ばす。
②肩甲骨を開くようにして両肩を前に動かす。
  ※無理に腕を前に出してストレッチしようとすると、無駄な力が関係ないところに掛かって逆効果になる。


【3】横隔膜を引く:広背筋ストレッチ

①両手を軽く鳩尾に当てる。
②息を鼻からゆっくり吐きながら、両手で鳩尾を軽く押し上げる(手はあくまで呼吸の補助)。
③息を吐き続けると肩甲骨が開いていくので、肩も若干前に出る。すると自然に背中~腰が緩やかに曲がり、広背筋が伸びる。
  ※正座または椅子に座った状態でするとやりやすい。


名付けて、ダンゴムシ師匠の訓え

腰が痛い時によく「ダンゴムシみたいに身体を丸めて膝を抱えると楽になる(上図)」と聞く。腰痛は主に腰が反っている事により起こるらしく、自然な脊椎のカーブに反しているために腰椎が圧迫され、痛みが出る。それを解消するには逆に丸めるのが良いそうで、自分ではダンゴムシになっているつもりなんだが、図の左のように実は屈んでいるだけだったりするらしい。
正確には、図の右のようにちょっとばかしコツがいる。肩甲骨-鳩尾仙骨に意識を集中して、肩甲骨を持ち上げるようにすれば自然と反り腰が消えてダンゴムシになって背中が楽になるという。横から見たらそれこそ「?」みたいな姿勢が正解。丸くするのは腰ではなくて背中。もっと言うと、胸椎


胸筋が詰まっていると、胸が圧迫された状態であるため当然声は出しづらくなる。

僧帽筋が硬いと肩が上がり後頭部筋が詰まるので、これも声が出しづらくなる。特に高音・pp は肩頸周りの自由度が高くないと、結果的に声帯を詰めてしまい故障の原因にもなるので、厳重注意である。
広背筋は、歌うたいにとってもしかしたら最重要な筋肉かも知れない。腹式呼吸と言えども、コントロールしているのは広背筋が殆ど。特にロングトーンや跳躍の際、ここが如何に自由に使えているかが物を言う。演奏会の後の広背筋の疲労度がその日の出来のバロメーターになるくらい、重要な筋肉と言える。


この3箇所を完全に緩めた暁には、確かに楽になる。急に楽になる。笑えるくらい身体が軽くなる。

普段ストレッチしてるつもりでも、実は無駄な所に力が入ってしまい結果的に反ってしまっている。「ストレッチ=伸ばす」だから左みたいな姿勢でやってしまいがちだが、「身体を伸ばす」というより「骨格を開く」感じが正しいし理に適っている。

開放? 解放? 快方?

詰まっている筋肉の隙間を開放して力を解放したら、状態も快方に向かうという訳。良く出来た理屈である。


もっと詳しい関連記事を書かれているピアチェーレさんのサイトも併せてご覧いただきたい。





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このHPは、楽器本体である身体と声を通じて、線維筋痛症で末梢神経障害で脊椎側彎症で性同一性障害の声楽家@♪こーへー♪自身に起こる希少な症状と現状を、少しでも多くの人に知ってもらいたいという思いを込めた活動記録・告知サイトです。