恐らく前例が無いであろう、性同一性障害でホルモン治療しながらの男声ソプラノ

線維筋痛症(FM)を筆頭にいくつもの奇病難病を持ちつつ、性同一性障害(GID:FtoM)として成人してからホルモン療法を始めた声楽家なんて、聞いたこともない。 それも依然ソプラノを維持しているなんて恐らく世界でも例がないんじゃないでしょうか

喘息でお世話になった、GIDの専門医でもある音声外来の専門医は小生の声に大変興味を持たれた。


 大阪教育大学の通称『ゲーオン』と呼ばれる音楽専攻コースを卒業と同時に演奏活動を開始。
 高校卒業後1浪し、初めて本格的に声楽のレッスンを受ける。この時就いた師に脊椎側弯症の悪化を指摘され、声楽を断念するか否か迫られるも断固進学を決意、コルセット着用を条件に修業を開始。大学入学後も3回生頃まで着用。恩師曰く「コルセットを着けて歌科に入学してきたのは君が初めて」。

 高校在学時、既に W-High-C (ピアノの中心の[ド]の2オクターブ上)が難なく出せるソプラノであったが、大学1回生の3月、卒業式の練習の際右声帯に長さ約2mmの裂傷を負い発声障害となる。一転、2ヶ月後完治してからは更に上へと発声領域が広がり、最終的に W-High-Gis まで到達。フルートをはじめ木管楽器とのアンサンブルでは、 W-High-Es までの作品を手掛ける上で大変有効となった。通称『ぴよぴよボイス』。

 そんな生粋のソプラノとして20年歌い続けた後、2011年9月より性同一性障害(GID)におけるホルモン治療を開始。また同年4月、職場で突然の激痛に襲われ微動だに出来なくなり、そのまま暫く車椅子通勤となる。子供の頃からの激痛に加え数々のナゾの症状のほぼ全てが線維筋痛症に由来するものであることをこの時初めて知る。以降、一進一退しながらも諸症状は徐々に悪化。一時期は杖歩行に回復したものの、現在外出は車椅子。家の中では伝い歩き。


 ホルモン療法により大きく変化することと言えば、筋肉量と声。
 男性ホルモン投与により筋肉・骨格が成長し、元々線維筋痛症でほぼ毎日全身の骨格に負担が掛かり痛んでいる身体にとって、追い討ちをかける結果となる。また筋肉そのものの付き方も変わってくるため、骨格への影響以外に、今まで通りの発声法では全く歌えなくなることもあった。

 そして同時に声変わり。「声と身体そのものが仕事道具の声楽家が、声変わりする治療受けて大丈夫なん???」と当然周りは不審がる。声変わりし始めた頃、ピアニストと演奏会やる・やらないでかなり意見はぶつかった。ただ自分にはソプラノを貫ける確信のようなものがあり、実際ソプラノのままテナーまでも獲得するという、思いも寄らないお得な結果となった。

 喋り声は治療開始1ヶ月で変化し始め、『ウィーン少年合唱団の最高学年の男の子(冒頭の音声外来医師曰く)』のような変声期を経験。声は1年弱でかなり落ち着き、最終的には最高・最低音共に下に5度平行移動(3オクターブ+2度の範囲は変わらず)したことになる。これを受けて2012年冬の演奏会から、ソプラノ・テノールの両音域を曲によって使い分ける“二刀流”を採用。自分ならではの演奏方法・声の活用法を模索・開拓中。

 2013年春、喘息治療薬の副作用による声帯炎を起こし、歌唱時のみ中音域の発声障害になるが、断薬により以前の発声領域をほぼ回復。極度の倦怠感や筋疲労・右半身の痙攣の多発など、症状は決して好転しているとは言えない上に効果的な治療法・薬がほとんど無い中で、長年付き合ってきた身体と常に会話しながら、日々の症状に対処・工夫して行くよう心がけている。


【声楽家 髙岡康平】

1971年大阪・堺生まれ。4歳よりピアノを始める。

府立三国丘高校、大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コース(声楽専修)卒業。第7回泉北・第24回堺市各新人音楽家演奏会選出。高須禮子、寺尾正、畑儀文の各氏に師事。ロシア歌曲を寺尾正氏に師事。ナガイ音楽院にてV.ツェーファー氏の特別レッスン受講。コーラス・アンサンブルなどの経験を経て、ロシア歌曲・日本歌曲を中心としたソロ演奏活動の他、文部省唱歌をはじめとする『国樂』に重点を置いたレクチャーコンサートを定期的に開催し、唱歌や童謡の消滅に警鐘を鳴らしつつその復興を訴え続けている。

子供の頃より線維筋痛症・末梢神経障害を始めとした多種多様な症状と共に育ち、また40歳にして性同一性障害のホルモン治療を開始し変声期を経験するなど、声楽家として歌い続けるにはハンディが多い現状ながら、その特性を遺憾なく発揮しソプラノ~テノールのスイッチヴォーカリストとして精力的に活動中。

■2008年、自身がパーソナリティを勤めたWebラジオ《アニキの関西至上主義!~略して“アニ関”》(asRS)にて自身の企画・脚本・演出・音楽・出演・編集によるヴォイスドラマ「crescendo~僕が僕であるために~」を放送、後にCDリリース。同時に朗読劇として自主公演開催を機にG-clef 設立
■読み聞かせCD《耳で聞くお話シリーズ》「桃太郎」「浦島太郎」発売(asRS)。声優として13声種を駆使した朗読の他、BGM作曲にて参加
■2009年8月、自作品単独朗読公演《朗読LIVE~夏の終わり》、翌年2月《朗読LIVE2~刺繍~》開催

■その他、朗読グループ等への楽曲提供多数

■2015年より大阪労災病院入院病棟モーニングコール用放送として楽曲提供

■2018年より大阪弁のイントネーションを元にした童謡を創作、演奏会にて発表

■2020年、自身初のパステル画集付歌曲集『翡翠/妖精の歌』出版

■2022年、インコをモチーフとしたパステル画のグッズショップ『パステルインコ同盟』を開設

  等、パステルイラストレーターとしても活動中。


【パステルイラストレーター TILLY's先輩】

2019年、突然ソフトパステルに目覚め、主に風景画や静物画の他、依頼を受けてインコを数多く描き始める。2020年、自身初のパステル画集付歌曲集『翡翠 / 妖精の歌』をPLAZA de EVENTOSの協力を得て出版。

2022年、インコを〇で表現したオリジナルブランド『まるいんこ』をシリーズ化し、レアインコを中心としたグッズショップ『パステルインコ同盟』を開設。風景画などの一般イラストは【G-shop】にてはがきセットとして販売中。


【creator 紅蓮 / 井上きりん】

中学2年夏頃から作詞・作曲、高校時代から詩・小説の創作に取り組む。

大学3回生~約10年間社会人バンド活動に参加し、作詞・作曲・編曲&KBを担当。当時の作品は後の朗読ライブやWebラジオにも使用されている。また演劇や朗読CDにBGM等の音楽を作曲・提供するなど、総合的な音楽活動にも意欲的に取り組んでいる。

2015年より、大阪労災病院入院病棟モーニングコール用放送として、オリジナルラジオドラマ『crescendo』Soundtrackより「晴天」を楽曲提供。


本職以外の音楽活動に於いては『紅蓮』、文筆創作活動に於いては『きりん』名義を使用。


【声優 詩絵里@アニキ】

『詩絵里』はGIDにて改名前の♪こーへー♪の本名。名前はバリバリ女性であるが、見た目も中身も心意気もまさにアニキということで、愛称が『アニキ』。


オリジナル脚本による『crescendo~僕が僕であるために』 を2008年舞台化の後、ラジオドラマとして10を超えるキャラクターボイスを駆使し完全プロデュース。自身がパーソナリティを勤めるWebラジオ 『アニキの関西至上主義!~略して“アニ関”』 にて公開・CD化。

子供のための朗読CD「桃太郎」「浦島太郎」(提供:asRS)にも、声優・楽曲提供の双方で参加している。


【G-clef】

2008年の朗読劇自主公演を機に設立(当初の名称は『G-cref』)。各活動に於いて、流動的にメンバーを構成、または自身単独にて公演を実行する際の「事務局」として各種問合せ・ご案内に対応するためのプライベートレーベル。


2010年9月より、表記を G-cref から現在の G-clef と改称。G-clef とは楽譜の先頭に付いている「ト音記号」のこと。