声を出す前の準備運動あれこれ ~ その3:破顔一笑の術


今回は、歌筋(声帯筋も含めて、顔面筋・後頭筋・背筋・腹筋)のストレッチと鍛え直し。

歌を習い始めの頃、先生によく言われるのは「笑った時のようにほっぺた上げて歌いなさい」。結果的にそうする事でマスケラ(眼鏡のブリッジ辺り)に声がより当たり易いということなんだが、顔(顔面筋)が硬いと発音にも直結する。


そこで考案!!

♪こーへー♪流母音発声トレーニング!!

 (飽くまでオレ流なので、これが正解の発声法だとは思わないでいただきたい。間違ってはいないけど)

①トレーニング前の準備は、ハミング(閉口式)で出しやすい高さから1音ずつ、ちょっと強めにゆっくり息が切れるまで。

②次に同じくハミングで、閉口⇒開口⇒閉口で。

上記を1オクターブくらいの移動で練習し、口腔内を十分にほぐしたら、ハミング⇒a(アー)で徐々に声を出していく。所要時間 約15分。

声を出す準備が出来たらやっと母音発声練習。
まず自分の下顎に軽く手を当てて動かないように固定し、舌と口輪筋だけで母音を発声する。(上図の赤い線が舌、緑の線が口輪筋

【1】1母音に付き最低1秒ずつ(四分音符=60)、ゆっくりと次に移行し、初めは左から右へ片道、最後はロングトーンで全4小節分。1課題に付き1オクターブ往復で1セット。これを①~⑤で5セット。

【2】同じく1母音四分音符=60で今度は往復し、前4小節分。1課題に付き上下1オクターブ往復で1セット。これを①~⑤で5セット。

【3】①を左から右へ片道し、そのまま②を右から左へ片道。④正順⇒③逆順 など、同じ音を使うモチーフをつなげて4小節分。


…などなど、音程を1音ずつ上下向させたり3度の上下向、あるいは跳躍などに変えて、1オクターブ往復していく。
そんなこんなであっという間に1時間が経過。身体も声もだいぶ小慣れてきて、やっと曲を触ってみようかなという段になる。


ここで『舌と口輪筋だけで母音を発声する』とはどうするのか、ちょっと解説。

舌で母音を変えるのは、ドイツ語のウムラゥトと考えてもらって結構。よくウムラゥトを発音する時「ぉえうっ…」ってなるのは、舌と一緒に口輪筋も使って口を必要以上にすぼめてしまっているから。

例えば「a」の発音のまま、舌の奥の端っこを親知らずに軽く触れさせるようにするだけで、「ä」の発音は完成する。同じように「ö」「ü」もそれぞれ「o」「u」の発音のまま親知らずに舌の奥端を付けるだけ。音はほとんど「ä」=「e」、「ö」=「e」、「ü」=「i」になる筈である。要は、あまり「ae」「oe」「ui」と考えない事。とは言え日本にない音なので、初めはどういうものか解らず仕方ないだろうが。


さて、口輪筋とは、口角のちょっと上、それこそ口角を上げる時に使う筋肉の事(正確には唇の回り全体の筋肉を口輪筋と呼ぶが、ここでは口の動きに関して説明するので敢えて口輪筋と書いておく)。「u ⇔ i」とすると一番動く(はずの)筋肉。下顎を動かすことなくここだけで、実は母音のほぼ全部を発音出来たりする。特に「 u ⇔ i 」「 o ⇔ a 」は口輪筋の最大の見せ場。

こんな風に。

ちょっとエロい顔にはなるが、ここの筋肉が柔らかくないと発音がすこぶる悪くなる。所謂「活舌が悪い状態」。
口角がずっと落ちたままだとデックング したような発声になってしまい、言葉が篭って音も前に落ちてしまう。デックングはそれ自体歴とした発声法ではあるが、多用するものではない。更に口輪筋を上げることで頬筋もくくっと上がり、音がよりマスケラに当たり易くなる。感覚としては、前歯の裏に声の流れを当てるような感じか。


必要以上に顔を動かして歌う必要はないし、言語に因っては喋っている状態とほぼ同じような発音で歌わなければならないものもあり(日本モノは特に)、すべてに於いて同じようにする必要はないしそれはやるべきではないと思うが、あくまで準備運動としては身体と同様、顔にも筋肉がありそれを使って演奏する訳だから、しっかり解しておくに越したことはない。


すべてが自由でないと、そこから発せられる音楽に自由はないからね。





G-clef

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