この期に及んで



いやいや、勉強は一生モノである。


6月の演奏会も終わり、というか終わらぬうちから頭は既に8月の演奏会に移っている。

大体の選曲は1年分がさっと決めてあるんだが、やはり近付いてくると「やっぱりあれやりたいな」とか「こっちの方が合ってるかな」とか、体調や気分に従って変更は出てくるものである。ウチの演奏会はいつも年間テーマ(花鳥風月、とか四季シリーズ、とか)を決め、それに従って各回毎に選曲をする。


今年は特に、毎回新曲を最低1曲は入れて勉強すると決めている。


G-clef 主催のこの演奏会を始めてかれこれ…かれこれ…もう何年ですかな?(^^;)そろそろ8年? 最初の頃はそれこそ焼き直しというか、数少ない(?)持ちネタから小出ししていたが、1回の演奏曲数がそれこそ平均20曲にもなる当演奏会。早い時期からネタ切れを起こし始めた。年間では極力ダブらないように選曲するが、毎年同じ時期になると出てくる馴染みの曲というのはままあって、お客様にはまた聴けたと喜ばれたりもするが、本人的にはもうちょっとバリエィションが欲しくなる。


そこでの「最低1曲は新曲」である。


勿論斯様な理由からラインナップを増やす目的でもあるが、何より歌いたいと思いつつそのままになってしまった作品が結構な数ある。それでなくても、シューベルト歌曲を歌い尽くされた畑儀文先生ではないが、数多ある偉人の名曲を一つでも多く自分のものにしたいというのは、演奏家であれば誰しも思うところであろう。

選曲の度、楽譜を紐解きながら「あーコレいいなぁ」「うわぁ、これカッコイイ!」と初見で気になった作品を歌ってみては付箋を付け、或いは「これどんなんやったかなぁ」「あぁこれもう何年歌ってないやろ」と学生時代以来手を着けずそのままほぼ忘れてしまった作品まで、今年は兎に角チャレンジである。

自分の場合は特にロシア歌曲に注意が向くが、最近ではドイツ歌曲特にシューベルト作品や、昨今興味を持ち始めたイタリア古典モノにも眼を向けて、改めて勉強し直したいと奮闘している。


特に新曲に着手する際は、まず詩を読み、単語調べをする。この段階が実は一番しんどい。
だって辞書が…

 見えんのだよ!!(°д°;)

この2・3年、弱視レベルと言われるまで視力が落ち(老眼ではないらしく)、単行本すら読み辛くなってきた。見えない目で辞書を引く。発狂しそうである。


何とか意味が判ったら、次は原詩の音読である。まずは情感度外視・活舌最優先で1単語1単語しっかり発音する。そうしているうちに単語のリズムが文章(詩歌)のリズムに乗ってきて、自然にリエゾンが出来るようになる。そうしたらどの単語が大事だとか、何処に一番アクセントが来るとか、やはり自然に判るようになってくる。そこで旋律に合わせて詩を読むと、詩と旋律がちゃんと合致していることに改めて気付いて、ちょっと鳥肌が立つ。

この瞬間、結構好きやなぁ。

兎に角詩をしっかり読んでおけばあとは旋律に乗せればいいだけの話なので、自分としては旋律よりも詩を優先する。まぁ、歌曲というのは詩があってこその作品なので、それは当然の話なんだがな。先に旋律を覚えようとする人がいるが、そういう人の演奏は得てして詩が疎かになってただ歌ってるだけになる傾向があるように思う。

昔ピアノの先生に、先に左手を暗譜出来るまで覚えなさいと言われた。そうすれば右手(メロディ)を乗せればいいだけだから、音楽が創りやすいと。その時は『両手に意識がいくよりも楽だから』程度に思っていたが、左手を旋律・右手を詩と考えれば、これ成る程な理屈であったなぁと今になって先生の指導方法に感謝する。


さて、大体の歌の雰囲気が掴めたところで必ずやるのがピアノを弾くこと。

自分的には、どの時代のどの作品に於いても(日本の唱歌とて)ピアノパートを伴奏とは捉えていない。ピアニストは伴奏者ではなく、アンサンブルの共演者と認識している。合唱のアルトやテナーが伴奏ではないように、ピアノも作品を構築する1パートと見做している。なので、自分は例え歌パートしか担当しないとしても、他のパートがどういう旋律を演奏しているかは把握しておく必要がある。特にロマン派の作品ではピアノと声部が掛け合うことが多く、ピアノの音を受けて歌が続いたり、歌の流れを受けてのピアノであったりと、互いの一体感と信頼感が重要になる作品が多い。また事前に自分でピアノを弾いておくことで、歌にとってどの音が重要になるかや、ピアノのどこに歌のモチーフが隠されているかなどを見付ける手掛りにもなる。これらをピアニストと共有出来れば、合わせはバッチリである。

勿論、自分は本職のピアニストのようにちゃんとした演奏は出来んし、手も小さくてオクターブは届かんし、それ以前に大学以来本気で弾いてないのでブランクは長い(腱鞘炎でドクターストップ)。なので大体の雰囲気を掴む程度ではあるが、たまぁに物に依っては昔ガッツリ弾いていた(Dストップ掛かってたんちゃうんかぃ!というツッコミはナシで)作品もあり、懐かしさについ盛り上がって弾き込んでしまって、その後腰に激痛で歌の練習どころではなくなることもあったりする。
やはり昔取った何とやら、ピアノも腰で弾いてるゎ(^^;)。


歌であれピアノであれ、やはり新しい作品を勉強するのは楽しい。学生時代以来およそ20年振りに勉強し直す作品など、更に新発見で目からウロコどころか目ん玉落ちることしばしば。人生経験も加味され、好き嫌いもさることながら曲への解釈なども変わってきて、毎回新発見の嵐に見舞われている。


そうそう、詩や作品の勉強と平行して、ネタ集めにも結構時間を割く。これは怠ってはならない大事な作業である。西洋作品のみならず、否寧ろ日本の作品に於いて特に念入りに下調べする。自国の文化を知らない事ほど恥ずかしいものはないからな。勿論お客様を愉しませる為でもあるが、そもそも演奏者としてその作品や作者の情報や背景を知ると知らぬとでは、音楽創りの隠し味に違いが出るのは言うまでもない。

そんな時、これが結構役に立ったりするんだわぁ。

まぁ、解釈自体は人それぞれってのもあるんだがな(ちょっと感傷的で美化しすぎな面が否めない)。作者や作品が生まれた時代背景などの史実に基づく情報には大変役立っておる。



そんなわけで、次回に向けてまた勉強開始である。


G-clef

このHPは、楽器本体である身体と声を通じて、線維筋痛症で末梢神経障害で脊椎側彎症で性同一性障害の声楽家@♪こーへー♪自身に起こる希少な症状と現状を、少しでも多くの人に知ってもらいたいという思いを込めた活動記録・告知サイトです。 *各種お問い合わせは<standalone2501s9♪gmail.com>まで(♪を@に変えて送信してください)*